ボッコちゃん

2日連続の投稿。

とにかく感想文を消化してしまいたいという想いで溢れてます。

 

ところで、恋に至る病の記事で、筒井康隆さんの本が

TikTokきっかけで再ブームになってると書きましたが

それを受けての本人のインタビューが良かったので紹介したい。

 

 

「本は面白い」という気づきは天からのギフト......この言葉は覚えておこう。

筒井康隆氏を知らないオタク向けに説明すると

「パプリカ」とか「時をかける少女」の原作書いてる人です。

以前、このブログでは「最後の喫煙者」を氏の作品で取り上げました(2010年の記事)

時をかける少女は高校の頃クラスに置いてあったので

朝読の時間に読んだ思い出がある。

確か、その頃はアニメ映画版を見る前だったので

その後、映画を見て全然ストーリー違うんだが!?となったような。

あと僕が読んだ事あるのは「旅のラゴス」なんだけど

かなり良かったので、いつかラゴスの感想文も書きたい。

今回紹介する本も、この筒井康隆氏と少なからず関係が。

星新一著ボッコちゃん

 

 

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星新一氏は小松左京氏、筒井康隆氏と並び日本SF御三家と称され

特にショートショートの名手として有名ですね。

短い話の中にもしっかりと起承転結が織り込まれている事から

ストーリー作りのお手本とされることも多い作家だそうです。

読んだ事なくても、名前は聞いた事あるという人も多いはず。

僕も名前はよく聞くけど、作品は読んだことないなと思って

星新一 オススメ」とかで調べた結果

大体名前が挙がっていたこの本を買ってみる事に。

短編集になっており、50作品が収録されています。

 

読んでみると、SFとブラックジョークを合わせたような作品が多かった。

なので、ブラックな笑いが苦手な人には全くオススメ出来ない。

思ったより万人受けするような作品ではありませんでした。

表題にもなっている「ボッコちゃん」がまさにそういう話。

ショートショートというだけあって

大体の話は10ページ以内に終わるような内容なので

サクサク読む事が出来る。

どうも、僕は読み切り作品が好きな傾向があるようで

1話でそのストーリーが完結する蟲師や、ブラックジャック空が灰色だからなどは

どれもめちゃくちゃ好きだから楽しく読む事が出来ました。

普段本を読まない人でも、こういう形式の本なら楽しめるんじゃないだろうか

個人的に好きだなと思った話は以下。

 

「おーいでてこーい」

「月の光」

「猫と鼠」

生活維持省

「マネー・エイジ」

「闇の眼」

「妖精」

「プレゼント」

 

僕が特に気に入ったのは「月の光」という作品なんですが

他の作品は簡潔で読みやすい文体で書かれているのに

この作品は文学的な表現を使って書かれていて

本の中では異質な雰囲気を放っています。

話の内容は、ある金持ちが屋敷の中で

異国の少女をペットとして飼っているという内容。

(15歳の混血の少女という事で、描写的に白人のハーフと思われる)

金持ちは赤ん坊の頃からその少女を育てており

言葉を一切教えず、自身も徹底的に言葉を発しないようにして育てた。

それは、言葉が愛情を薄めるという自身の信念によるものだった。

エサは金持ちが直接手で食べさせてやる。

少女は自身が飼われている部屋から外に出た事もなく

社会とは完全に切り離された環境で

金持ちの愛情だけを注がれて育った。

そんなある日、金持ちが交通事故に遭ってしまう。

その間、金持ちの召使が少女にエサをやろうとするが

愛情という副食物がないと、少女はエサを食べる事が出来なかった。

当然言葉も通じず、途方に暮れる召使。

やがて、病院で治療していた金持ちが亡くなったという知らせが入る。

召使は、通じないだろうが少女にこの事実を知らせようとしたが

既に少女は冷たくなっていた。

 

どういう話なのかは解釈が難しい。

少女をペットとして飼う非人道的な人間の話ともとれるし

愛情が無いと人は生きていけないという話ともとれるし

純粋な愛情の前に言葉は不要だという話ともとれる。

他の作品はオチで笑えたり、そういう事だったのかってなるポイントがあるけど

この話は、最後まで読んでもどういう話?となる人が多いと思う。

理由を説明するのは難しいけど、僕はこの作品に「美しさ」を感じました。

「月の光」はドビュッシーの有名な楽曲名でもあるけれど

この作品に関係があるかは謎。

しかし、月の光を浴びて部屋に佇む

汚れた世界を知らないペットの少女を想像すると

楽曲ともマッチしているように感じられます。

 

 

 

 

月の光をそのまま引用コーナーに掲載しようかとも思ったけど

流石に長くなりすぎるし

著作権的にアレになりそうなので、やめておきます・・

なので冒頭部分だけを掲載

 

月の光

 

広い部屋の、ガラス張りの天井からは

青みをおびた月の光が静かに流れ込み

きらめく星々が、音のない交響楽をかなでていた。

部屋の片すみにあるいくつかの鉢植えのユリは

それぞれ十以上もの花を重そうにつけ

濃い、むせるようなかおりを絶えまなくまき散らしている。

 

その反対側のすみの小さなプールの水は

冷ややかに澄んで、スイレンの花を浮かせ

壁の噴水からふき出しつづけている水滴を受けて

かすかな音と波紋とをつぎつぎと生みだしていた。

水は、大理石のプールのふちを越えてあふれ

タイルの床をただよいながら、どこかに流れ去る。

ここが彼のペットの飼われている室であった。

彼のペットは、しなやかなからだを床の上に横たえて眠り

水はその足先を月光に映えながらゆっくりと洗った。

 

著者の真骨頂という感じの話ではないので

これが星新一作品で一番好きって人はあまりいないと思います。

この本の紹介でとりあげるべき作品でもないですね......

ただ、僕はこの話が一番良いと思った、それだけです。

 

月といえば、この前の部分月食

思っていたよりも食されている感じが分かって良かったですね。

星を観る上では邪魔ものにされる事もある月だけど

たまに「今日の月滅茶苦茶綺麗だな」って瞬間ありますよね。

天気が良くて、新月とかじゃなければ

星の光が届きにくい地域でも月は見る事が出来るし、僕は結構好きです。

前の家に住んでた頃、屋根の上に登って

珈琲を飲みながら、煙草と月見なんてクサい事をカマしていた記憶があります。

もう少し地球に近ければより美しく見えるんでしょうが

実際は毎年数センチずつ地球から遠ざかっているという。

たまにめっちゃ大きく真っ黄色に見える時あるけどあれなんだろうね?