DREAMIN’

ある所にお金持ちの家の娘がいました。

娘はお金持ちの妻に似、とても綺麗で

娘はお金持ちの夫に似、とても賢明で

お金持ちの両親とは逆に、清らかな心を持った娘でした。

悪を働き、金を得ていたお金持ちの両親は

その事を咎めようとする娘を

だんだん鬱陶しく思うようになりました。

「お前なんて生まれなければ良かった。」

両親は毎日のように、つぶやくようになりました。

自分の家に娘の居場所はもうありませんでした。

「余計な事を言わずに

お父さんとお母さんの言う事をただ聞いていれば良かったのに」

深く傷ついた娘は自分の心を閉ざしました。

するとお金持ちの両親は娘の事を見直し

パーティー会場にも娘を出させました。

「おとなしいお嬢様ですね。」

「自慢の娘ですよ。」

とても可憐で大人しい娘は

お金持ちの両親にとって、自慢の娘となりました。

ただ、娘は決して人と心を交わそうとしませんでした。

自分の言葉が余計な災いを生むと知ったから

娘は何も言おうとしませんでした。

でも、両親から愛を注がれ、娘は幸せでした。

ある日、娘はパーティ会場で一人の男の子と出会いました。

自分と同じ年齢ぐらいの子で

その子は娘を見かけると気さくに話しかけてきました。

何も言わない娘に、その少年は喋り続けました。

何故、言葉を喋らない自分に熱心に話しかけてきてくれるのか

娘は不思議で仕方ありませんでした。

「俺達、友達になろうよ。」

友達

娘はその響きに胸が高鳴りました。

生まれてから一人も友達というものが出来た事が無かったから。

娘は

「うん」

と、とても久しぶりに言葉を発しました。

しかし、それも束の間

お金持ちの父親が娘を見つけて駆け寄ってきました。

「君!うちの娘にあまり関わらないでくれないか?」

「あ・・ごめんなさい・・」

「ほら、行くぞ」

娘はお金持ちの父親に手を引かれて、家へ帰らされました。

その夜、お金持ちの両親は娘に言い聞かせました。

「いいか、あの子供は○○会社の社長の息子だ

昔はあの会社も相当儲かっていたみたいだが

今や倒産寸前のゴミ会社。

そんな所の息子と付き合っていたらお前にまで不幸が乗り移る

もしまたパーティ会場であの子供と会っても話したりするんじゃないぞ?」

娘は黙って首を縦に振り続けました。

それ以来、少女はパーティー会場でその少年と出会う事はありませんでした。

生まれて初めて出来た友達と会う事は・・

後日、娘はその少年の父親の会社が倒産したと聞かされました。


そのうち、お金持ちの両親は

娘以外に子供を授かる事が無く

娘に会社を継がせようと

社会教育をするようになりました。

ある日、娘が両親の仕事場を見学している時の事

娘は、あの時の少年を見つけました。

両親の商売道具としてトラックに積まれているのを見つけました。

そのトラックには他にも、幼い子供達が積まれているのを見つけました。

娘は知っていました。

両親が貧しい子供を親から引き取り

その新鮮な内臓や目玉や心臓を

必要としている人たちに売り渡す商売をしている事を。

トラックは走り出しました。

娘の知らない地に向かって。

娘は走り去るトラックを眺める事しか出来ませんでした。

最後に走り去るトラックから聞こえた少年の言葉が

娘の胸に、深く、永遠と響いていました。