平面いぬ。

 

ようやく感想文が追い付いてきた......

今回もkissyou本で

前回と同じく乙一著の平面いぬ。

 

 

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またしても変なタイトルの本である。

面白さを匂わせるタイトルでもないし

正直、今回借りた本の中では一番期待していなかった。

が、予想を裏切り当たり本でした。

まさか平面いぬ。というタイトルで

涙腺を刺激されるとは思わなかった......

本当に最近涙腺がガバガバ過ぎてビビる。

年齢を重ねると涙腺が緩むのは

前頭葉の機能が衰えているからだそうで

感情を制御出来なくなってしまっているらしい。

おっさんがキレやすいのと同じ原理だとか。

涙腺が緩むのはいいけど、キレやすくなるのは嫌だな......

個人的には、むしろ昔より寛容になったと思っているんだけどなぁ。

 

そんな事より本題。

この本には4つの話が収録されていて

まず1つ目は「石ノ目」という話。

目を見た物の姿を石に変えてしまうという

日本版ゴルゴンともいうべき

石ノ目という怪物が、ある山にいるという設定で

主人公がひょんな事から

石ノ目と思わしき人物と遭遇するというストーリー。

この話はオチが予想出来てしまったのと

なんだか文体が硬くて個人的にはイマイチだった。

 

2つ目は「はじめ」という話。

小学生時代の主人公が、悪気なしである罪を犯してしまう。

先生やクラスメイトから責められるのが嫌だった主人公は

はじめという名前の、どこにも実在しない子供のせいにする。

すぐバレそうな嘘だと思いきや

他のクラスメイトからも、はじめらしき人物を見たという証言があがり

結局その事件は、はじめの仕業だとみなされるようになった。

その後も主人公は友人と一緒にはじめの人物像を作り上げていくと

自分たちの知らない所で、その人物像と同じ

はじめの目撃談が上がるようになる。

やがて、主人公と友人には、はじめの幻聴が聞こえはじめ

幻覚として姿を認識出来るまでになる......という話。

 

想像上の人物が現実の世界に干渉しだすという設定がかなり良いし

最後は普通にいい話で、これも読んでて涙腺を刺激された話だった。

というか、普通に良い話というか

王道感動ストーリーみたいな感じで

こういう話も書ける人なんだ......と驚きました。

平面いぬ。も良かったけど、この話が一番好きかもしれない。

 

3つ目は「BLUE」という話。

布から人形を作って販売し、生活の足しにしている人物が

ある雑貨屋で偶然購入した不思議な布で人形を作ったところ

その人形に魂が宿り、各々動き出すようになってしまった。

やがて、人形を作った人物は死んでしまい

生き人形達は、元々の布が販売されていた

雑貨屋に引き取られる事になる。

そしてある家族に売り渡されて......という内容。

 

なんとなく童話っぽい話だなと思いました。

そしてひたすらに胸糞展開が続く・・。

正直この本の中では一番印象に残らなかった話かもしれない。

 

そして最後に「平面いぬ。」

平面いぬって何だろうと思っていたけれど

表紙を見れば分かるように、犬のタトゥーの事だった。

主人公の友人の実家が彫師をやっていて

そこで働いている中国人のお姉さんに

ちょっとしたノリで犬のタトゥーを彫ってもらう事になる。

そしたらそのタトゥーが本物の犬のように主人公の体を

動き回るようになってしまうという話。

 

この設定だけ見ると、明らかにギャグテイストの話で

実際の話もギャグテイストで進んでいくんだけど

そこに王道感動ストーリーも織り込まれている。

そして、読んでる時は気にしなかったけれど

読み終わった時に、意図的に主人公の名前が伏せられていた事に気付いた。

主人公の名前が明かされるのは本当に最後なんだけど

その時にあるセリフの本当の意味を理解して

ウルッと来てしまった。

 

という訳で、個人的に良かった話は「はじめ」と「平面いぬ。」

これで乙一作品を2冊読んだ事になるけれど

風変りで面白い設定を考え出せるだけでなく

ちゃんとストーリーも面白いのでマジで天才だと思う。

設定が際だった作品で真っ先に思い浮かぶのは

個人的にリアル鬼ごっこなんだけど

やはりどこかチープな感じがするのに対し

乙一作品は中身も伴っているという感じです。