こころ

 

バーナード嬢曰くに影響を受けてか、本を読む機会が多くなったのですが

僕の記憶力では、せっかく読んだ本の内容も色褪せ、朽ちていくだけなので

せっかくだし、今後、読んだ本の所感をここに記していきたいと思います。

その時自分が感じた事なんて、本の内容以上に忘れてしまうし

日記のネタにもなるので、狂オシキ鬼Win-Win

この企画を始めようと思ったのも、今読んでいる本が

太宰の読者が、自分が書いた日記を太宰に送り

その送られてきた日記を元に、太宰が執筆した作品と知って

よし、僕も日記をやろうと思ったからです。

 

初回は最近読んだばかりの「こころ」をやっていきます。

夏目金之助さん(これ、アネロスマガジンでやった奴だ)の書いた小説で

日本で一番売れている小説としても知られています。

(本当は黒柳徹子の窓ぎわのトットちゃんなんですが

小説という形態からは少し外れている気がするので・・)

文学をかじろうと思えば、まず外せない作品の一つと思う。

んで、これ高校の授業でやりましたね。

マトモに学校に行ってなかったのに

何故かこころをやったっていう記憶だけは持っている。

なので、皆さんも大体のあらすじは分かっているかもしれないが

単簡(漱石がよく使った表現らしい、意味は簡単に同じ)にあらすじを

というか、今回書きたい事がネタバレありきじゃないと書けないので

ネタバレの鬼でいきます。

 

1. 主人公僕(東大生)、海でダンディなおっさん見つける

2. 一方的にそのおっさんを「先生」と呼んで付きまとい、ロランシアの教会で家族登録

3. 先生恒例行事の墓参りに付きまとったら、ガチで嫌がられる

4. 僕、大学卒業するも、進路が定まらずNEET

5. 僕の父、逝きそう、逝く前に立派な姿を見せてくれと言われる

6. 先生に、何かイイ話ないっすか~?と媚びて手紙を出す

7. 明治天皇崩御の知らせが入る、父、生きる気力を失う

8.乃木希典明治天皇の後を追って自刃した知らせが入る、父、死ぬ気マンマン

9. 全然返事の無かった先生からようやく返事の手紙が来る

10. 返事じゃなくて遺書だこれ

 

・・・と、先生の遺書パートに入る前はこんな感じで

半分ぐらいある残りのページは、全て先生が僕に宛てた遺書の内容になり

主人公の存在は消えます。

ここの遺書で綴られるのが、先生と、先生の友人であるKと

お嬢さんのトライアングラー

こころをちゃんと読む前に、ネトラレ物みたいな話を聞いた事があって

そのイメージがなんとなくあったんだけど

確かにKの立場に立てばそうだが、普通に読んでたらそういう感覚にはならないデスね

と、いう訳で、Kというクソ真面目な友人を自分の下宿先に呼び込んだら

その下宿先のお嬢さんの事好きになっちゃったかもとKから相談を受け

同じくお嬢さんに好意を寄せていた先生が、じゃあ先に告白しちゃいま~すwwww

ハイ結婚きまりましたー!ってやったら

Kが自殺してしまうという結末を迎え

結果、罪悪感に苛まれ、ずっとうつうつします・・状態だった先生が

明治天皇崩御と後に続いた乃木希典に触発されて自らも命を落とすと。

そして、恒例の墓参りは、Kの墓参りだった事が分かり

主人公がつきまとってガチで嫌がった理由などが明らかになる訳です。

ちなみにこのKの墓は、東京の雑司ヶ谷霊園という所にあるのですが

漱石自身の墓も、この雑司ヶ谷霊園にアリ〼

そして、Kという名前は

英語のKnowなどでKの文字を発音しない事から

「存在しない」という意味でつけられたそうな・・・

(月が綺麗ですねと同じく浮説カモ)

 

んで、今回ボクがこころを読んだキッカケは

中田敦彦Youtube大学で取り上げられてたからなんすよね。

 

 

正直、あらすじをザッと見ただけでは

なんでこんなに売れてるの?ってなると思うし

僕自身も、動画を見る前までは、恋愛小説的な話だとしか思っていなかったんですが

こころは時代の変化に伴う価値観の変化について描いた作品であるって事を

動画で解説していて、そうだったのかと感心して読むに至ったワケです。

 

動画を見てもらえれば一番分かりやすいんですが

なんせ長いので、頑張ってここで書いてみるけれども

この作品がどういう作品であるかを理解する為には

まず、乃木希典という人物と、当時の時代背景というのを知らないといけないと

僕はこれ見るまで、乃木希典について全く知らなかったんですが

日本陸軍の将軍であり、日露戦争での活躍でまさに国民的英雄となり

世界的にも評価され、昭和天皇の教育係をも務めた人物という事。

更に、東京の乃木坂という地名は、この乃木希典に由来し

乃木坂には乃木希典を祀った乃木神社まであるっちゅー事でどえらい人物。

 

乃木さんは、まさに軍人の中の軍人のような人で

西南戦争に政府側として従軍した際に、自分達の旗を奪われてしまった事や

日露戦争で大勢の部下を死なせてしまった事に対して、ずっと自責の念を感じており

恐らく、自分は生き残るべき人間では無かった、死ぬべき時に死ねなかったと

ずっと考えていたのでしょう、明治天皇崩御を受け

自分の死に時は今しかないと自刃に至ったようです。

まー僕たちの感覚からすると、天皇の後追って自殺ってマジ?って感じでしょうが

当時も、特に若い世代の人間からはそういう冷ややかな意見があったようで

後に、漱石門下に入る芥川龍之介も乃木さんの行為を批判したよう。

しかし、漱石は明治と共に生きた人間なので、乃木さん推しであり

そういった乃木希典に対しての批判を止める為に書いたのが

この、こころという小説だっていう話。

ていうか授業でここまで教えてもらった?

僕は教えてもらってないぞ!!!!

登校してなかっただけかもしれないですが

 

先生の遺書の終わりには、私が殉死するならば、明治の精神に殉死する。

私が自殺する理由を君は呑み込めないかもしれないが

それは時代の変化によるものだから仕方がない、と書かれています。

つまり、乃木希典の殉死を理解出来ないのは

生きてきた時代が違うからだという事を、若手作家に伝えたかったのでしょう。

ジェネレーションギャップという言葉もありますが

確かに、その時代時代で普遍的な価値観や考え方は変わっていきます。

これは、僕も以前から似たような事を考えていて

絶対的な正義なんて存在しない、時代によって正義や正しいとされる事は

変わっていくというような事を思っていたもんだから

せやな わかる って動画見てかなり響いたんですよね。

この世代間の考え方の違いが、今の時代に一番顕著に現れるのは

働き方に対しての考えだと思っていて

僕らぐらいの世代は、給料だけでなく、プライベートや休みとのバランスも大事だと

考えている層が多いのに対し

上の世代になってくると、とにかく仕事をして金を稼ぐのが正義で

仕事に人生を捧げるべきだというような考え方が浸透してるように思う。

電通の件などもあって、今の世論的にはそういった考えはアウトになって来ているけど

昔はそれが普通だったんだろうなぁと思いますし。

 

・・・という訳で所感のつもりが、ただの作品解説になってしまった訳ですが

最後に、読んでいて印象的だった部分を抜粋したいと思います。

 

この手紙があなたの手に落ちる頃には

私はもうこの世にはいないでしょう。

とくに死んでいるでしょう

 

私は新聞で乃木大将の死ぬ前に書き残して行ったものを読みました。

西南戦争の時敵に旗を奪られて以来、申し訳のために

死のう死のうと思って、つい今日まで生きていたという意味の句を見た時

私は思わず指を折って、乃木さんが死ぬ覚悟をしながら

生きながらえて来た年月を勘定して見ました。

西南戦争は明治十年ですから、明治四十五年までには

三十五年の距離があります。

乃木さんはこの三十五年の間死のう死のうと思って

死ぬ機会を待っていたらしいのです。

私はそういう人に取って、生きていた三十五年が苦しいか

また刀を腹へ突き立てた一刹那が苦しいか

どっちが苦しいだろうと考えました。