三条京阪駅前午後黒物語2
一体どういう事だろうか
目の前の女性、クロとは間違いなく初対面のはずである
それをいきなり私の名前を呼び、更に混沌の午後が到来するだとか言い始めた
そう、岩倉吉俊とはいかにも私の本名である。
この女は一体何者だ?
「岩倉さん、あなたにお話があるの」
私は一つピンときた事があった
こういうのは宗教の勧誘だとかアンケートだとか押し売りだとかに相場が決まっている。
「すいません用事があるので」
そう言い残し食べかけのハンバーガーとポテトが乗ったトレイを手に席を立ち上がろうとした
・・・がクロの手により遮られてしまう
「あんまりしつこいと店員を呼びますよ?」
「まぁ最後まで話を聞きなさいよ早漏くん。」
「何を・・・」
文句を言ってやろうかと思ったがクロの牽制するような目つきを前にすっかり腰が引けてしまった。
「貴方に協力して貰いたいの」
「アンケートの?」
皮肉っぽく応えてみせるもクロは無反応だ。
それどころかこいつは何を言っているんだというような目をしている
「まぁここじゃ場所が悪いから・・ちょっとついてきてもらえないかしら?」
やはりだ
このまま何処かのビルの中に連れて行って
買いたくもない宝石だとかを買わされるのだろう
「私の事を疑ってるみたいね。」
「そりゃそうでしょう、面識もないのにいきなり名前で呼ばれるし怪し過ぎます」
「あぁそれなら私あなたの個人情報を掌握してるから」
「・・は?」
「えー岩倉吉俊平成生まれ、血液型はA型最終学歴中卒
彼女いない歴=年齢 好きな自慰の仕方は抱き枕の下にオナホールを置いて腰を動かす・・
それで座右の銘が『H大好き』・・ナニコレ?」
「うわー!やめろ!!!」
思わず大声を出してしまい店内がざわめく
「分かった!ついていけば良いんだろついていけば!」
「それじゃあ行きましょうか」
クロはニッコリと微笑んだ
・・・それにしても彼女は本当に何者なのだろう
今クロが言った事は全て事実である
とにかく今はクロについて行くしかないようだー
クロに連れられやってきたのはバーガーキングから歩いて約5分の所にあるシダックスだ
「・・なぜカラオケ?」
部屋まで入ってやっとの事出た言葉がそれだった
「カラオケなら個室だし声も周りに聞こえづらいから好都合なのよ
貴方もここにはたまに一人カラオケしにくるんでしょう?」
・・その情報も筒抜けか
「なぁ、なんであんたはそんなに俺の事を知っているんだ?」
「まぁ、どうせカラオケに来たんだしとりあえず一曲歌いましょうよ」
いつの間にかクロは曲を入れていた
曲はDavidBowieの『LifeOnMars?』だ私の好きな曲でもあるので驚いた
しかしカラオケで歌う人を見るのは初めてである
そしてクロはそれをほぼ完璧に歌いこなしてしまった
「凄いなあんた・・」
「ありがとう、次は貴方の番よ」
という物の私は正直音痴で会ったばかりの、仮にも女性の前で歌うのはかなり気が引ける
「大丈夫 、音痴なのも知ってるから」
・・どうやらクロの前では隠し事は通用しないらしい
私はヤケになり平沢師匠の『地球ネコ』を歌った
「・・変な歌歌うのね
原曲が全然分からないから音痴がどうかもよく分からなかったわ」
「まぁあんたに言われたくないけど.・ ・
というかなんで俺たち普通にカラオケしてるんだ?!」
「そうね、そろそろ本題に入りましょうか」
そう言うとクロはコイーバをポケットから取り出してzippoでもって火をつけた
その煙は正に場の空気を変える物であったのは間違いない。
「貴方の個人情報をここまで集めてあなたに接近した理由
私たち『アーテル』について
日本全体に影を落としてる物の正体。混沌の午後について
私が今から話すのはこれらの内容よ
そして最終的に貴方に協力してもらう事になるわ」
クロはいまから一体何を話すというのだろう?
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